皆さまは花札(はなふだ)をご存じでしょうか。
花札(はなふだ)は日本のかるたの一種で、安土桃山時代にポルトガルから持ち込まれ江戸時代に現在の形に発展したものです。
日本の花札は各地でそれぞれの図柄や呼び名がありそれぞれに特徴がありますが、一般に花札といえば八々花(はちはちはな)のことを指し、一組48枚に12ヶ月折々の花や草木が4枚ずつ描かれ、優美な花鳥風月の詩趣が表現されています。
武蔵野、越後花、越後小花(初期)、山形花、花巻花の一部の素札には古歌が記されています。
花札ごよみでは、花札の各月の花や草木、古歌をご紹介するとともに、その植物などを通して季節の移り変わりを感じていただければと思っています。
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5月:杜若に八橋(やつはし)

杜若八橋」と呼ぶ場合と「菖蒲八つ橋」と呼ぶ場合があります。
札に描かれた八つ橋は、三河(愛知県)の地名です。
花は「アヤメ(菖蒲)」「ショウブ(菖蒲)」「カキツバタ(杜若)」「ハナショウブ(花菖蒲)」のいずれかになります。
いずれも花の形状や呼び名が似ています。
花姿はアヤメハナショウブカキツバタが似ていて、アヤメショウブは同じく「菖蒲」と書くため、混同しがちなのです。
では、札に書かれた花はどれになるのでしょう。

アヤメ(菖蒲):キジカクシ目アヤメ科アヤメ属アヤメ種/山野の草地に生息
ハナショウブ(花菖蒲):キジカクシ目アヤメ科アヤメ属ノハナショウブ種/池や川べりなどの湿地に生息
ショウブ(菖蒲):ショウブ目ショウブ科ショウブ属ショウブ種/池や溝などの水辺に生息
カキツバタ(杜若):キジカクシ目アヤメ科アヤメ属カキツバタ種/池や川べり湿地に生息
どれも似ているようで全くの別物となります。

菖蒲」の読み方は「しょうぶ」ではなく「あやめ」で、あやめは山野の草地に生息するため、 絵柄のモチーフとなっているのは「あやめ」ではなく、「八橋」の近くに咲く「杜若」の花のようです。
しょうぶ」も水辺に生えていますが、「しょうぶ」の花は「ガマ」と呼ばれる黄緑色の棒のような円柱状の肉穂花序です。
したがって、札に書かれた花は、やはり「杜若」が有力でしょうか?

『古今和歌集410番・在原業平』
らごろも つつなれにし ましあれば るばるきぬる びをしぞおもふ
現代語訳:唐衣のように着慣れた妻を残して、はるばる来てしまった旅を遣る瀬なく思う。
※札に書かれた句には「かきつばた」が折句(各句頭に物の名などを一字ずつ置いて詠んだ歌)になっています。

どちらにせよ「いずれあやめかかきつばた」という慣用句があるように、 どちらも優れていて、優劣をつけにくいほど美しい花だということです。

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